この公演を知ったのは、ファイナルファンタジー14の楽曲の演奏会『交響組曲エオルゼア』にも出演したゲーム好きのテノール歌手、ネモリーノ役の長尾隆央さんのツイートでした(その時からFF14を始められ、私の感想ツイートも拾って頂きました。私はもう14を引退してるんですが、一度だけレイドでご一緒しましたね)。
今は音楽家としての長尾さんのファンであり、舞台には行ける限り足を運んでおります。その中でも今回の『愛の妙薬』は特別でした。
ご本人も覚えてないと思うんですが、こんなやりとりがあったのです。
長尾さんのツイートから溢れ出る、奥様への人として、歌手としての尊敬も含む深い愛情。そして庭の植物や食べ物を大切にする誠実で純朴なお人柄は、まさにネモリーノそのものだと思いました(ただしネモリーノはちょっとお間抜けなキャラクターなので、ストレートにそうは言えなかったのですが)。そしてその時から、いつか長尾さんがネモリーノを演じられる日が来たら、どんなに遠くても絶対に都合つけて行こうと決めてました。
前置きが長くなりましたが、さて感想です。
小さな劇場で間近に観た舞台の上の長尾さんは、想像以上に、ネモリーノ以外の何者でもありませんでした。上演中に何度か目が合いましたが、それもその筈、他の役のアリアの最中ですら、私長尾さんばかり見てましたから(笑)
表情も仕草もとてもチャーミングで目が離せませんでした。アディーナ登場に目を輝かせながらも、いざとなると直視できずに横目でちらちら見やる様、ベルコーレに向けるぶすっとした視線、そして一番目に焼き付いている、第一幕最後の崩れ落ちた姿!!
肝心の歌ももちろん素敵でした。
長尾さんのソロを初めて聴いたのは、2018年のみなとみらいでのジョイントコンサート(昨年はドイツ行きで逃しましたが、今年は行けます!)で、青空のように明るく澄んだお声だなあと思ったものです。
二幕のアリアは言うまでもなく(母も絶賛)、アディーナに縋らんばかりの
"Perche, perche!"
も胸に来ました(数少ない、聞き取れて意味がわかったイタリア語だったのもありますが。ハイデルベルクのペルケオさん、ありがとう)。
遠い昔の学生公演ですが、通常編成の『愛の妙薬』も観たことがあります(その時のドゥルカマーラ役は私の高校の合唱部の同期でした)。それはそれで素晴らしかったのですが、『愛の妙薬』のようにコミカルで軽妙なお話の場合、舞台と客席の距離が近いこうした公演の方がより楽しめるんではないかと思いました。
そして(音楽史、舞台史に詳しくない者の戯言ですが)これこそが「歌劇」の本来の形なのではないかとも想像しました。壮大なオーケストラも、迫力ある合唱も、数千人を収容するホールの隅々まで響かせるために発展してきた面もあるんではないでしょうか?
もちろん『ローエングリン』の迫力ある演奏も、いまだに思い出すだけで鳥肌が立つほどでした。でもキャストの表情までは見えず、歌や仕草から想像するしかありませんでしたから。
話が脱線しましたが、名古屋から泊まりで観にきた母も、それほどオペラに親しんでいない旦那もとても楽しんでいました。連れてきてよかったです。私も、一旦は受付に託した花束を持って直接感動をお伝えせずにはいられませんでした。素晴らしい舞台を本当にありがとうございました。
そして2月20日の「歌曲で紐解く世界の愛」では、以前動画で公開していたシューマンの『献呈』を生で聴けるのですね。これまた長尾さんにぴったりの曲だと思います。そして昨年は行けなかったみなとみらいのジョイントコンサートも楽しみです。
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